南宗寺  ☆☆☆

 
黄河がアムドの北に流れてきて貴徳の先で大きなダムになる、李家峡だ。
赤い土の山々をぬって舗装道路が走っている。国立公園になっている、意味はわからないがカンブラ(坎布拉)という。
 
その北岸の観光道路からは李家峡がきれいに見える、その反対側南岸の山の中腹に南宗寺がある。行った人は少ない。
 
ボランティアでアムドの貴重な建築物を直しているグループが、7年位前にお堂を修復していた。
チベット自治区仏教が迫害を受けた時、逃れてきた三人の高僧が修行を積んだゆかりのお堂らしい。大仏教国にもかかわらず仏教が迫害を受けた時代もあるのだ。ちょっと行ってみたい。
 
サイトで5、6年前訪ねた人の記録を読むとずいぶんさびれた、交通手段もきびしいとこらしい、ますます興味が増し、出かける。
 
ところが‥‥サイトで見た南宗寺は昔の話だということがすぐにわかった。ダムも寺もきちんと整理され観光化していた。
 

西寧から李家峡行きがあるはずだが見つからない。
昨日行った扎巴の運転手達がここからでも行けると言っていたので8時発のバスで扎巴に。しかしそこからはそれらしいバスも乗り合いもない。
 
いろいろ聞いていると親切なオヤジが教えてくれた。
 
ここから頻繁に出ている康杨行きの乗り合いに乗り、康杨からタクシーを拾えば行けると。
よく観察すると扎巴からの乗り合いは康杨行きしかなかった。
 

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 さっそく乗り込む、まだ客は二人、満員になるまで出ない。通りを行ったり来たりして20分くらいでやっと客をひろい、五人乗って出発。
 
結構距離はあった。康杨はダムに流れ込む川沿いの町だ結構大きくにぎやかだ、大きな川があるせいで景色もいい。
 
乗り合いを下りてウロウロしてるとタクシーが私を見つけてやって来た。
15分くらいで李家峡の町に着いた。小さい、その上工事中、今アムドの町はどこでも工事中!  時間は昼頃だ。

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メイン道路が一本、そこから右折する行き止まりの道がありそこにホテルがあると言う、行ってみたが見つからない。
やっと見つけたホテルの玄関は封鎖されている。横の売店の女に裏に回れば入れると教えられホテルの裏口に行くと入れた。
 
しかしフロントはしーんとしている、大きな声で呼んでみるとお姉さんが出てきた、別に不機嫌ではなかった、よかった蔵族らしい。
フロントにはスマホの番号が書いた紙がある、そこに電話してお姉さんを呼ぶらしい。スマホなしの中国暮らしはもうありえない。
ホテルは悪くない、でも誰でも入れるわけだからちょっとぶっそうだ。
 
荷物を置きやっと南宗寺に出発だ。
 
メイン道路に行くと運転手らしき男が二人ほど道端に腰掛けていた。一人に南宗寺に行きたいと言うと立ち上がりタクシーに乗せた。
この男が大正解だった。
 
ダムの周りにはきちんと舗装された観光道路が完成していた。
 
少し行くとチェクポイントがあった、女性の公安と知り合いなのだろう運転手がしばらく話している、また少し行くと観光船の船着き場の入り口を通った。
ここから船が出るのか乗りたいなみたいなことを言うと運転手が目を輝かせ、ちょっと待ってろ船に乗れるか電話してみると言い、車を止め電話した。
 
大丈夫だ船はありそうだ。この車で寺まで行き、帰りは船に乗って船着き場まで戻りまた車に乗る、っていうのはどうだと聞いてきた。
 
ものすごくいい!  思っていた通りになった。ありがとう運ちゃん。
 

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途中の休憩所、運転手が手を合わせて拝むまねをする、そうだね仏様みたいだ。
 
南宗寺のふもとに着く、きちんとした階段ができている。
ここだ、上まで登れと運転手に送り出され頂上を目指す。
 

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階段は長くけっこうけっこう大変だ。上からチベタンの一団がお祈りの歌を歌いながら楽しそうに下りてくる。「チョデモ」 あいさするとニコニコして挨拶を返す。
 
この辺はチベット語ではなくアムド方言、タシデレではなくチョデモ。
さよならにも使える。デモでもOK、デモと言うとニコニコ手を振ってくれる。
 
やっと頂上についた、しかし湖が一望できる美しい景観を予想していたがほんの一部しか湖は見えなかった。そんなにきれいではなかった。
 

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 赤い山の左にほんの少し見える水色が湖。
 
寺は尼寺、優しそうな尼さんに声をかけると、二人でこのお堂を守っているのだ教えてくれた。尼さん二人でこんな山の上。昔は階段などなかった、山をはい登るという感じ、すごいなあ。
 

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あの修行のお堂は日本人が修復したはずだけどと聞いてみたが、そう…という感じ。
修復した時の完成写真は鳥取県の投げ入れ堂のような感じだったが、今は前に広場が作られこんな感じだ。

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元来た階段を下り船着き場へ。いくつかある寺に連れて行くかと思ったが、運転手は興味なさそうだった。見るほどのとこではなさそうだ。
 
船着き場のテントには男が一人、あの運転手と俺は友達だと説明してくれる、そして船代をタダにしてくれた。

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この男もなかなか感じよく、このパンフレットは俺が編集したんだと見せてくれた、ついでだから一つ買った。 

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船は十人乗りくらい、英国人が一人、残りは八人組の漢族の家族。
これがすごい、走り出すと小さな船内を歩き回り写真を撮りまくりじっとしていない。私はといえばたった八人で夜もねむれずというかんじだった。
 

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うまく撮れたから中国政府にゴマすって掲載。

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南宗寺は湖からは見えない、寺の向かいの山に建設中の仏像がよく見える。
 
湖は思ったよりいい感じだ、いろんなグループがボートよりやや大きいが、この大きさで大丈夫なのかと思う舟で見物している。でも湖はあまり風が吹かない感じだからいいのだろう。
 

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船はすぐに船着き場に到着した、少し短すぎる。階段を上ると運転手が待っていた、二、三人の男たちと雑談しながら。
 
一緒に少し休む。
と、その中の一人が日本はいい国だとさかんにほめる。
恐縮していると、突然「北国の春」を歌い出した。その歌はもう古いだろうと思いつつ一緒に大声で歌う、大ウケ! 炎天下の青空の下で酒もないのに。
 
もっと歌いたい気分だが二人に共通する曲はこれしかない。
しかしこの曲は何年もたっているのに覚えていて歌いやすい、詩もなかなかいい感じだし、大ヒットしたのもうなづける。
 
 
できたらいいなと思った通りに寺を見物でき船にも乗れて大満足。運転手と明日の朝8時に会い貴徳に送ってもらう約束をして別れた。
 
翌日の朝、通りに西寧行きのバスが止まっていた。8時過ぎに出て行った。西寧からのバスはあるのだ、李家峡行きではなく坎布拉行きのようだ、同じ場所だ。

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ここは青蔵鉄道を乗る前の高地順応に使える。うまくバスを使えば西寧から1日で往復できる、数人でタクシーをチャーターすれば簡単だ。タール寺見学に飽きた人におすすめ。

いがいと李家峡は美しく船遊びも楽しい +2、寺もなかなかいい雰囲気なので +1 合計3点  (16年7月)