尕尔寺 ⑴ gā ěr sì ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
囊谦は標高3656m、ベットからゆっくり起き上がらないとクラっとする。
したくをしていると、ドアをノックする音が、 8時出発の約束の10分前に運転手がやってきた。けっこうちゃんとしている。
寺は南の方角、チベット自治区からそんなに遠くないところにある。しかし車はなんか細い泥んこ道の住宅街に入って行き、一軒の家の前で止まった。
どこここ、運転手さんのお宅です、では失礼してと、門をこぐるとチベット犬に迎えられた。
部屋に入ると、おばさんが立っていた。俺のマーマだ。こんにちは、……。
このへんタシデレでもチョデムでもない、誰もあいさつしないから。
椅子に座ると、ミルクティーはなくお湯を出してくれ、食べなとチベットのパンをすすめてくれる。
このチベットのパンはほとんどどこの家にも必ずテーブルの上に置いてある、四六時中。味はほとんどしない、少し日本人には物足りない。
ヨーグルト食べるかといって出してくれたけど、少し勇気のいる容器とコップだった。こわがらずに食べてみた。味は日本のヨーグルトと同じ、少し酸っぱいが。
そーか、運転手さん私の朝食がまだだろうと思い自分の家に連れて来てくれたのだ。なんか使用でもあるのかと思った。
家の中はびっくり、散らかし放題って感じ、囊谦の町が雑然としている理由がよくわかる。チベット人の家でこんな感じの室内はよく見かける。
チベット人てこうゆうところがある、けっこういろいろとゆるい。ゴミが散らかっていても気にもとめないし、約束なんかもそんなに忠実ではない。いま流行りの発達障害だろうか。
いちいち細かくうるさくない、というふうにいい方にとらえよう。
パーパと嫁さんは何処かに行ってるらしい、子供は三人学校へ。
広場で人を拾っていても白タクではない。運転手って役所に登録しないといけないはずだからけっこう収入はいいほうかも、中流の上って感じの家だろうか。
などと家を見回してあれこれ詮索するオヤジと運転手は、吠えないチベット犬に送られて、いよいよ出発。
うーん楽しみだ、写真で見てはいたけれどどんな所だろう。なんて思っている私の期待を裏切って、少し行くとまた横道に男が立っている。やっぱりお約束通り誰か乗り込んでくるわけね。
いっつも半日または一日借り切ったはずの車に必ず運転手の友達とか客が乗り込んでくる。これ中国の常識、私にはむかう手はないのだ。でもこの友達は少し事情が違った。それはもう少したってからわかった。
3人を乗せた車はすぐに美しい道を走る。山あり谷あり、ヤクあり馬あり、家あり寺あり、岩あり、一面の緑、それはそれは美しい!
青海省のはずれだから車も少ないのだろう、なんとなく他の場所より空気が澄んでいて緑が美しい、美しいだけではなく、なんとなくのんびりしていてとてもおだやかな気分になれるのだ。
一面の緑の道が大好きでなんどもアムドやカムに来ている私だが、この道は今までで最高かもしれない。
途中から本通をそれて右に曲がるはずだと思っていたが、うとうとしていて気がついた時は、低い針葉樹のしげる川に沿った岩に挟まれた細い道に変わっていた。
標高3500くらいだと木は生えないはずなのに立派な木に囲まれている。なぜだろう、川の水のせいか?
チョルテンの絵のある岩の前で途中トイレ休憩をすまし、しばらく行くと、あれだあれが「尕尔寺だ」運転手が指を指す。
見上げると高い岩山の中腹に寺が、写真で見ていたから知ってはいたが高すぎる。
左側の平らな部分にある四角い物が寺。
道はくねくねと曲がりひらけた場所に出る、周りは高い山に囲まれている。その一つの岩山に向かって道は登って行く。
着いた、すごい! 寺ではなく周りの景色が。(続く)
パノラマ写真は撮れないのでちょっとお借りして、こんな感じ。