尕尔寺 ⑵ gā ěr sì  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

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 下の道から寺を望む。

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 寺の学校、まわりも寺関係の建物。

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運転手達は山の斜面に一列に並ぶいろいろある仏像にいちいちお祈りして歩く。実はこの男達敬虔な仏教徒でこの寺にたくさん寄進しているらしく、どの坊さんとも親しい。

一通り拝むと、奥の方の小屋に向かう、運転手は私が一緒についていくことに一瞬ためらったが。

小屋のそばにいる坊さんに何か聞いてから、小屋をぐるっと回って南側に。そこには、鼻にチューブを付けたリンポチェ(高僧)が横たわっていた。

それほど病状は悪くなさそうで、巡礼者達に大きく開かれた窓から対応してくれる。二人とも大感激、ひざまづいてお祈り、私も立っていては失礼だと思いひざまづく。

高僧の持っているマニ車を順番に頭につけてもらう。ありがたい、これで少しは賢くなるかも、もう年齢的に遅い気もするが。

お付きの僧が醤油さしのような小さな入れ物から、手に何かの水をスプーンいっぱいくらいずつたらしてくれる。

手に擦り付けていると、吸うのだと言われた。少し残っている水に口をつけた。

三人とも感激して高僧の小屋を後にする。
友達は多分このために来たのだろう。体に障害があり少しでも無事でいることを祈っているみたいだ、チャンスがあればいつでもこの寺に来たいのだろう、同乗したのもよくわかる。

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 高僧のいる小屋の裏側、造花がいっぱいかざってある。

元の場所に戻り眺めのいい建物の屋上に、そこで同じホテルに泊まっていたスイス人の女性二人と出会う。スイスには山がいっぱいあるのにどうしてこんな山深い所に? などと聞いてみるが、笑っていた。

運転手が言う、あいつら600元でここまで来たんだ、お前は500元で高僧にも会え飯も食え、入れないところにも案内してもらっていいだろう。

はいはい、みんな敬虔な仏教徒のあなたのおかげです。冗談でなく本当のことだ、あらためて運転手に感謝。

中心のお堂の中を見せてもらう。坊さんが「子」と言うのだと親切に説明してくれる、つまりチベット語で「ツ」と呼ばれるのだろう飾り物が部屋中たくさん並んでいた。小さなやつは飾り物として仏像の前に並んでいるのを他の寺でもよく見るが、ここのはみんな大きい。

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そして食堂に。ここは坊さん専用、一般人は入れない。ご飯の上にコーンと野菜を炒めをのせた優しい味付けの食事を出してくれた。食器はカップラーメンの空きカップ

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昼飯としては少し多いので残そうとすると、ダメだせっかくお坊さんが作ってくれたんだからと、運転手におこられる。食べる前に友達が運転手の入れ物にたくさん分けていたのはそういうことだったのか。

この寺とても人気があるみたいだ、立派な高僧のせい? 高い岩山の上にある寺に畏敬を感じるせい?

食後、別の部屋へ行きお布施を納める。私も10元出しておいた。すると赤い袋に入った何かをくれた、なんだろうと思い中を見ると黒い小さな玉がいくつも入っていた。

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高僧のだ、食べるのだと運転手が言う、へーと思い飲もうとしたが…

昔読んだ「西川一三」さんの本を思い出した。チベットでは高僧をうやまい、少しでも近づくために、ありがたみを分けてもらうために、高僧の排泄物を粉と混ぜて錠剤のようにして食べる風習があると。

ってことはこれは高僧のアレ! ほんとかなあ食べんのやめとこう。ってことはさっき高僧のおつきが手に垂らしてくれた水は、もしかしておしっこを薄めたもの?

ゲゲッ!  ペッ、ペッ

このバチ当たりが。

西川一三さんの本はそうゆう坊さん達の生活がいろいろ書いてあって楽しい。チベットファン必読書だ。
なんせ戦争が終わりスパイのようなことをしていた筆者が、日本に帰れず食うこともままならなくなりチベット人にふんして、ラサのデブン寺に入り込み、いちから坊主の修行をしたからなんでも書いてある。

見物も終わり、車の所へ、しかしこの美しい風景をもう少し楽しみたい。下に見える小さな集落の真ん中に緑の広場がある、あそこで休みたいと言うと、あそこはダメだ、この先の草原で休もう。

このために持ってきた携帯コンロの固形燃料に火をつけ、コーヒーを飲む。うーん、とっても幸せ。

それにしても二人ともリラックスし過ぎじゃない。でも、ピクニック(リンカ)はチベット人の得意種目だからこうなるかも。

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 標高4212m

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まわりにはBBQをやったらぴったりの石組みがいくつか。ここで巡礼者達が食事するのか、と聞くと、いや坊さん達が使うのだ。巡礼者達はそんなことはできない。

草原の奥に二階建てのホテルのような建物が、あれはホテルか、いや坊さん達が使うんだ。この辺り一帯は聖域という感じで、巡礼者や旅行者は泊まることはできないらしい。テントもダメ。

あらためて景色を見渡す、きれいだ。
あまりよく撮れなかったがいちおう。 


ガアールスー上の道から

よく雑誌などの美しい写真を見て、いろいろな有名観光地を訪ねてみてもそれほどでもなく、写真のほうがよかったってことが多いけど、ふつう!  実際に目にしたこの谷を囲む美しい立体感は写真を見ていただけではわからない、ここは写真を超えている。この寺半端ないって!


サイトにあった写真をしっけいしてこの立体的な寺を説明。360度カメラやドローンがないとむずかしい。

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下の方に見えた家々は集落ではなく寺関係の建物らしい、学校もある。車を停め、学校の中へ。小坊主達がサッカーやバスケをやっている。尼さんもいっぱいいる。

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学校の脇にあるお堂の中に入る、普通のチベットの寺。そういえば上の寺には本堂というか仏像の前で僧がそろいお経を唱える部屋はなかったなあ。

室内をぐるっと回ってお祈り。脇に巡礼中のおばさん達が一生懸命マニ車を回しお経を唱えている。やっぱり人気のある寺なのだ。

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少し下った所に尼寺があった。訪ねてみたが誰もいない。尼さん達は昼間は寺に行って修行しているんだと運転手が言う。でも尼寺は山の中腹にある、毎日ここを下ってあの寺まで登ってまた帰ってくるのか、うーん。

帰途に着いた、途中にある小さな空き地に新しいキャンプ小屋のようなものが立っている。ここに巡礼者や旅行者は泊まるらしい。しかしけっこういっぱいある、そんなに来るのか。

夏は放牧などの仕事で忙しいから、農繁期、秋や冬に来るんだろうか。この寺の寒い冬を想像するとぞっとする。でも坊さん達は生活してるわけだし、すごいな!
囊谦の1月の最高平均気温は3度、最低平均気温は-13度と書いてあった。思ったほどではないが。

行きにトイレ休憩した川岸で車をおりる。二人とも奥の方まで入っていく、ずいぶん長いトイレだこと、ではなかった、二人で野いちごを摘んでいたのだ。子供へのおみやげか。f:id:mu2ro:20180920023025j:plain

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寺の帰り道


美しかった寺を思い出しながら元来た道を戻り、町に近づくと、車はまた友達の家の方に向かっていく。車を停め、白菜の種を撒くからお前も来いと一緒に降ろされる。

はあー。

友達が隣の家から鍬を借りてかついでくる。

あの、すいません、私お客様なんですけど、お客様は神様なんですけど、今ここで明るい農作業なんですか、何も今でなくてもと思いますが、え、いや、まあ、でも、いいんですけど、時間はあるわけだし…

畑は道をはさんで家の向かいにある、二人について行くと、青稞(チンコウ、裸麦のこと、チベット人の主食ツァンパはこれで作られる)の畑の脇に3畳くらいの空き地が。

耕作地は塀で囲まれている。田という字はこの形から作られたのだ、しかし日本では田の字を田んぼ専用に使ってしまったので、畑という字を作ったのだ、畑の字はじつは日本製。中国では田んぼは稲田と書く。

などとミニ知識を披露したところでどうしようもない。運転手がひと通り鍬を入れる、友達が白菜のタネをまいて、運転手がまた軽く土をかぶせ、はいおしまい。あんまり平らじゃないけど。

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よかったわね種まきできて、私も心配だったの、遅れちゃったら困るもんね、これで美味しいキムチがいっぱい食べられるわね、ほんとよかった、よかった。隣の青稞も立派に実って刈り時だと思うけど、今度どんなお客さんが乗った時に刈るんでしょうね、気になるー、お客様は大混乱。

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 友達の家、道をはさんで塀に囲まれた畑。

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 家の前の風景、美しい所に住んでいるのだ。


そして囊谦のホテルへ無事到着。片道3時間、料金は500元。



とくに不満はない、ゆうことなし。 満点 × 2 = 10点  (18年7月)